雪解け水

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ん?え? 「っっんぐっふっ…」 その口に含んだ水を柚季の口から流し込む。そして少し端から溢れた水をペロっと舐めて離れるとニコッと殺戮的に微笑む。 「なに」 「え?じっと見てたから喉乾いたのかと思って。疲れてもう動けないでしょ?動けないからお風呂でさせてくれなかったんでしょ?」 普通にサラッとエロいことするよねこの人 …杏一にしたら普通のことなんだっけ っていうかお風呂で本気でするつもりでいたんだ 「水飲むくらい動けますぅ」 ハハッと笑い杏一もベッドに座り壁に背を付け柚季の頭を持ち上げると自分の腿に置いた。そして頭を優しく撫でる。 後から置くパターンなんだね 「ごめん結局やましいことしちゃって」 「やましくないよ。同じ気持ちでしたことなんだし…」 私から手ぇ出しちゃったし… …っていうかこの人やましいって意味わかってるのかなぁ… さっきあんな 『人間の欲求だから恥ずかしくない』 って堂々としてたし 多分ニュアンスがちょっと違う意味で捉えてるんだろうけど 「杏一、やましいって意味分かってる?」 「たくさんセックスすることでしょ?」 やっぱりちょっと違ったわ でももう今訂正するのめんどくさい… 「違うの?」 「もういいよ」 「諦めないでよ!」 「杏一はそのままでも大丈夫」 「なにそれ」 杏一はふふっと笑い柚季の頰にチュッとキスをする。 「ねぇ柚、ホントに杏奈産んだの?」 「は?何?疑ってんの?すっごいたいへ」 「だってすごく身体綺麗だったから。前と変わらず」 「へ?」 「子供産んだら妊娠線とかできたり、骨盤の関係で体型変わったりするんじゃないの?俺は別に構わないけど」 この子は本当に勉強してくれたんだね 「柚全然変わってなくて綺麗だったから抱いてる間凄く不思議に思ってた」 そんな見てたの? 「そんな疑うんならお兄ちゃんに聞けば分かるよ」 「そっか。でもいいや。またブン殴られそう」 「あ、大丈夫?ほっぺ」 そういえばこの人朝殴られてたじゃん 保冷剤あげたけどちゃんと冷やせたのかな ごめんそれどころじゃなくて 「うん、柚がすぐ保冷剤くれたし、口切れてなかったし」 「そっか。よかった。朝…出るの?」 もうこの土地を離れるのか… 正直ちょっと淋しい…私は先に帰るけど 「そうだなぁ…どうしよっかなぁ…」 「ん?」 「やっぱ柚のお兄さんにちゃんと挨拶して帰んないといけない気がしてて」 「へー。意外」 「そ?俺初対面ですんげー印象悪すぎたよね…ちょっと今更ビビってる自分に。お兄さん怖かったなーでも手加減してくれたと思う。優しいよね。でも優しい人って怒ると怖いんだよね」
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