雪解け水

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「実際は日本一周柚探し&自分見つめ直しの旅してた。事実は分かってもらいたい人に分かってもらえればいい」 「でもよくこの小さな町わかったね。誰にも言ってないし、絶対バレないと思ってたのに」 「出身県は知ってたけど市町村まで社長教えてくんないしさー…」 …伯父さん黙っててくれたんだ。 「柚が居なくなってなんかどうでも良くなっちゃって…でも性欲はあるわけじゃない?いやあると思ってたんだよね。柚とあんだけやっててさ。だからソープ行ったわけよ。 そしたら…フフッッ…」 急に杏一はその時のことを思い出して吹き出した。 「え?何?」 何か面白いことが起きたの? 「俺さぁ…勃たなくて。フフッアハハハハッ!」 すごい笑ってる… これはどんな感情なのか読めない柚季は目が点になりなんて言おうか迷っていた。 「あぁ、ごめんごめん、いやー自分でビックリした。結構いい女だったし頑張ってくれてたと思うんだけど。申し訳なかったな逆に。だから他の女とかもう異性として見れなくなったんだなって。柚にしか勃たなかったんだ、そりゃそうだよね。3年間みっちり柚だけだったし…柚が俺にとってどんだけ大きい存在だったのかってそこで気付いた」 「ふーん」 「嬉しい?」 「さあ」 嬉しいよそりゃあ。本当だったら。 私だけに感じてくれてたなんて。 そして私と同じ事考えてるなんて。 恥ずかしくて言えないから彼に抱きついた。 そんな柚季の行動に杏一は顔が緩みおでこにキスをする。 「ふふ可愛ぃっ。実は今日勃つかなってほんのちょっとだけ心配してた。柚の中入れるかなって。あの気持ち良さをまた味わえるのかなって内心ドキドキ半端なくて」 杏一は二人きりなのにいつもわざわざ柚季の耳元で囁く。 囁いた時のビクッとする柚季の反応が大好きだからだ。 それは柚季を初めて抱く前に車の中で覚えた感覚。今でも忘れられない。極端に言えばセックスの時の反応に近い。それがたまらない。 杏一にとって柚季は全部自分のツボを抑えられている。理想を遥かに超えているためもう既にあの時からゾッコンなのだ。 「な何言ってんだか」 「正直少し緊張してたんだよ。そんな心配要らなかったね」 そうだね逆に凄かったよねあなた 42.195キロ全速力で走れるよきっと。 「杏一でも緊張することあるんだね」 「まぁね。柚にだけだけど。 それで…何にもやる気も起きないしあの時の俺は廃人同然だった。だからもういっそのこと死のうかなーって」 え…死!? 柚季は驚いてピョンと顔だけ上げて杏一を見た。 私は杏奈が居たから生きてこれた 杏一は私が居なくなっても生きていける そう思ってあなたの元を離れた。 柚季は微笑んでる杏一を見て彼にも色々想いがあったんだと悟った。 怖くて杏一の想いも聞かず彼を一人にしてしまった罪悪感とさっきの罪悪感が追い討ちをかけ柚季を襲う。 そんな苦しみを顔に浮かべた柚季に杏一は微笑み唇を優しく重ねるとまたさっきの腕枕の体勢に戻す。 「本当に…死のうと思ったの?」 思ってたんじゃなくて本当に行動に移そうとしてた? なんでそんなに飄々としてるの? 本当なの? 演技なの? 私に心配させないように気遣ってるの? 「俺のマンションの屋上からね。死ねるでしょあんな高かったら。そしたらその日の仕事サボったのバレて社長がマンションに押しかけて来て、 『今この時から活動休止だから何しても構わない。だからこれからのこと会社は一切関与しない。自由にしろ』 って。あぁ死んでいいんだ。まぁ俺一人だし、俺もう終わったな…社長からも…親父からも見放されたんだ俺って思った…ハハ」 「そうなんだ…」 そんなに伯父さん冷たかったかな 「だけどその後すぐ 『ここからはお前の親父としてお前に一言くれてやる。死ぬ前にもう一度心底愛したひとりの女くらい必死になってその手で探してみろー!』 ってブン殴られた。ハハ」 おぉ…さすが。カッコいい。 「殴られちゃったんだ…杏一いっぱい殴られるね。ごめんね」 柚季は杏一の頬を優しく触れ杏一はその手を覆う。
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