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「は?え?何?昨日にタイムスリップした?!」
そしてこの人こんなに面白かったっけ。
「再確認してるだけ。こうやって可愛気ないし、冷めてるし、結構杏一に酷いこと」
「ぇえ?何言ってるの?俺の前だけ可愛いじゃん。一緒に居て楽しいじゃん。俺とのセックス気持ち良いでしょ?ん?心も躰も相性いいと思ってるの俺だけ?」
「ううん」
「っていうか俺の方が酷いことしてきたんじゃないかなぁ…躰だけって思わせてきて…」
「じゃあおあいこだね」
「ふふふ。あ、ほら、着替えてよ。送ってく」
送ってく?
「あぁ、やっぱりちゃんと出直して来ようかなって。スーツ家にいっぱいあるし。柚と話してて昨日の今日で逆に失礼かなってやっぱ思ったんだ。少し挨拶はしようと思うけど。大丈夫だよ。ビビって逃げたりするんじゃなくて…あ、でも信じてくれる?」
大人になったね杏一
「信じるよ」
杏一は満面の笑みで私抱き締める。
「あ、お兄ちゃんちょっと難しいかもしれないから肝据えてね」
「うんいきなり殴るくらいだからね。なんとなくわかってる」
お兄ちゃんは私が成人してから炭やき職人になった。
ほとんど山に木を切りに行ってるけど今日は杏奈を見てもらってるからまだ家に居るはず。
そしてバイクで家に送ってもらうと炭釜にはお兄ちゃんが居て薪を割っていた。
「お兄ちゃん、杏奈みてくれてありがとう」
「…あぁ。答えが出たみたいだな」
「うん、ありがと」
「玲子がちょうど来ててみてくれてる」
「え、そうなの!?」
お兄ちゃんの奥さんの玲子さんは親の介護の為に隣町にいてこちらの家にはたまにしか帰ってこれない。
「…で?」
お兄ちゃんが私の後ろの杏一に目線を移す。
「あ、昨日は突然すみません。あの」
「いきなり殴って悪かったな。大丈夫か?」
お兄ちゃんは薪を割りながら話しかける。
「あ、大丈夫です。お兄さん、」
「お前に“お兄さん”と呼ばれる筋合いはない。俺は壮志だ。例え将来そうなるとしても俺の兄妹は柚季だけだ」
お兄ちゃんは昔からずっと勘の鋭い男だった。
私の心なんて全部お見通しでこの人はきっと心が読める人なんだって昔からそう思っていた。
カン、カンっと薪割りの音が響いている。
「すみません…じゃあ壮志君、俺きちんとケジメつけてから挨拶に来ます。その…遊びじゃなくて本気ですから」
「勝手にすればいい。芸能人なんて俳優なんてもの俺は信じちゃいない。何が演技かわからんからな」
「お兄ちゃん」
お兄ちゃん昨日悪いやつじゃないって言ってなかったっけ?
壮志は手を止め斧を肩に担いで杏一に近付く。
「柚季を苦しめていた2年前までの件は柚季と杏奈の顔に免じて許してやろう。今度傷つけたらお前を殺しに行くだけだ」
お兄ちゃん、怖すぎるんですけど
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