310人が本棚に入れています
本棚に追加
「杏奈ー行こっか」
「んっ!」
「お兄ちゃーん保育園行ってきまーす…?」
…あれ、お兄ちゃんどこ行ったんだろ
さっき炭見に行ったはずじゃ
いつもならすぐ返事があるはずなのに
結局杏一から連絡が無いまま三日目が過ぎようとしていた。
こちらから連絡しても何も反応はなかった。
信じた私がやっぱり馬鹿だったのか
もしかして杏一の身に何かあったんじゃないか
色々考えたけど私は待つしかなかった。
私の左手の薬指には外されていない指輪を見つめる。
「マッマ?」
「あ、ごめんおじちゃんに言ってから保育園行こうね」
「おんに!おんに!」
「柚季!」
すると家の中からお兄ちゃんの声。
「お兄ちゃん、どしたの?保育園」
「柚季テレビ見ろ!」
そう言って慌てた様子でテレビを指差す。
[ーます…繰り返しお伝えします、昨晩深夜0時過ぎ都内の交差点でトラックとバイクの事故が起きました。バイクが直進していたところにトラックが右折してきて衝突した模様です。トラックの運転手から詳しいことを聞いています。なおバイクの運転手は芸能人で現在活動休止中のKYOUさんで今都内の病院に入院しており、病状はまだ明らかにされておりません。また詳しい情報が入り次第お伝えします。次のニュースです…」
テレビにKYOUの顔写真が…なにこれ
紛れもなく杏一だった。
「柚季、こいつ…」
杏一がバイク事故?
嘘だ
嘘だよ
「柚季!柚季!」
柚季は床にへなっと座り込み頭を抱える。
「お兄ちゃんどどうしようお兄ちゃん私どうすればいい?お兄ちゃん」
「柚季、柚季!とりあえず杏奈を保育園連れて行ってそのまま行こう!」
「どっどこに…?」
「お前、洋一おじさんに連絡しろ。なにかわかるんじゃねぇか?早くしろ」
「え?あ、そっか、うん、そ、そだね、えっと」
落ち着け
スマホを取り出し社長の連絡先を探す。手が震えて目の前がぼやけてきて中々探し出せない。
泣くのはまだ早い。
「貸せ」
お兄ちゃんが私からスマホを奪うとすぐまた返された。社長に既に呼び出し音が鳴っている。
お兄ちゃんが居てくれてホント助かった。
「ママぁ??」
「杏奈、大丈夫だ。今日はおじさんも一緒に連れて行くからな」
「わーい!マンマ!おんに!いっちょ!」
「杏奈、ママ少しお電話するから先に車乗っていよう」
「うっ!」
「よし良い子だ」
杏一
杏一
やだ
やだ…!
やだよ!
社長に電話を掛けるとすぐに出てくれた。
「伯父さん!!ニュース!!」
「あぁ柚季、見たのか。すまん連絡しなくて。俺のせいで…」
「杏一は?!いっ生きてるの?!」
「あぁ…今病院にいる。来れたら来い」
なんでそんなに落ち着いてるの?もしかして何か覚悟してるとか?!
「わかった」
「柚季!行くぞ!」
「あ、うん」
「なんて?」
「病院にいるって。なんかすごい落ち着いてて…逆に怖い…」
「でも急いであたふたしてるんじゃなければまだ大丈夫かもな」
「だといいんだけど…」
とにかく無事で居て…!
杏一!
最初のコメントを投稿しよう!