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杏奈を保育園に送り、お兄ちゃんが高速で病院まで連れて行ってくれた。
お兄ちゃんは残ってくれるって言ってたけど今日は炭が出来上がる日だし、もしかしたら杏奈のお迎えも頼まなきゃいけなくなるかもしれないから一度帰ってもらった。
病院に着くと既に報道陣が詰めかけていた。
だからどこから漏れるんだその情報。
私は伯父さんにメッセージを送り返事を待つ。
早く…早く…焦る自分にどうすることもできずウロウロ動くことしかできない。
ブブッという振動と共に直ぐにスマホを見ると階数と病室番号が送られてきた。
そこへ向かうと部屋の前に伯父さんが立っていた。
早足で近づく。
「伯父さん!」
「おぉ柚季、久し振りだな」
「お久しぶりです。あの、きょ杏一は…?」
「中にいる。ようやく事務所に帰って来たから復帰に向けてのミーティングとお祝いしてたんだ。夜遅くまで付き合わせてしまった。俺のせいだ」
「伯父さんのせいじゃないですよ。ぶつかってきたトラックが悪いんでしょ?」
「その原因を作ったのが俺なんだ。復帰は当分先になりそうだ…」
「え…それはどういう…」
「いいから中に入れ。会ってやれ。俺は少し席を外す」
「あ、うん…」
なんでそんな…深刻な顔しないでよ
そう言ってスタスタと去って行ってしまった。
どんな姿でも大丈夫
支える
私が
見てないのに
会ってないのに
もう泣きそう
いや泣いてる
気持ちを奮い立たせてスライドドアを開けた。
洋一とすれ違った看護師が声をかけようか迷っていた。
ニヤニヤと笑いを必死に堪えながら去って行く洋一の姿を見て。
その姿を柚季は知ることはない。
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