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「ぅあー!!柚だー!!来てくれたのー!?」
ん……?
「………え。」
あれ?なに?その元気な声。
今私何見てる?
幻想?
元気じゃんこの男
顔綺麗じゃん
包帯とかぐるぐるに巻かれて…
ないんだけど。
「あなた、事故、した?」
シュミレーションは出来てたはずだった。
ドアを開けると
↓
酸素吸入器又は人工呼吸器が付いていて
沢山管の繋がれた意識があるかないか分からない杏一に抱き着いて
↓
延々と泣き叫ぶ
…予定だった。
予定は崩れ予想外の出来事に言葉が単語調になってしまった。
あれほどテレビの見なかった私が業界にいた分妄想が激しくなってしまったのか
「あれ?柚どうかした?社長から聞いてないの?」
「事故…したんだよね?」
「したよ!トラックの運ちゃんぶつかって来たんだ!マジビビった!死んだかと思った。俺ぶっ飛んだもん河川敷まで!見て見てほら!腕骨折!俺骨折初めて!ヤバい痛い!柚助けてぇ!」
そう言ってギブスをしている右腕を見せる。
あぁごめん見えてなかった。
本当に怪我はしてたんだ。
なんだ…伯父さんがあんな煽り方するから…
さてははめたな…?
ここで演技すな。子役出身め。
そうか、あそこの交差点のすぐ近くには河川敷があるから草がクッションになったのかな
良かった…
「柚!?」
緊張の糸が切れて私はその場に倒れそうになり壁に寄りかかった。
「柚大丈夫?」
「それはこっちのセリフでしょ?連絡来なくて私がどれだけ心配したと思う?」
お兄ちゃんにも申し訳ない気持ちがいっぱいだ
いや私がキレてどうする
違う杏一に怒りたかったんじゃない
言いたかったことは
「ごめん自分家帰るまで充電切れるわ、コード無くすわ、きっとあのホテルだよ。俺達がめっちゃくっちゃ愛し合ったホテル。もっと愛し合いたかったホテル」
杏一は柚季にニカッと笑顔を届ける。
どんだけ強調してるんだろう
なにふざけてんの?
なんでそんな笑ってられるの?
私はね!本当に…
「あと肋も折れててさっ…俺なーんも出来ないやハハ…骨脆すぎた。カルシウムとらなきゃな。柚、また俺の栄養管理よろしく」
「杏一…」
「ん?」
「私、こんなに心配して動揺して気持ちがごちゃごちゃになったの初めて。杏一の元を去る時の方がまだマシだった。ホントに生きててよかった…」
「柚…今すぐ抱き締めてあげたいんだけど動けないからいい加減早く来てくれる?触ってくれる?本当は今の今まで…柚に会うまで生きた心地しなかったのは俺なんだ。抱き締めて欲しい。生きてるって感じたい。早く柚に触りたい」
柚季は杏一の元へ涙を流しながらゆっくりと歩き出し、そしてそっと抱き締めた。
「痛かったね。ありがとう、生きててくれて」
「だって俺が死んだらきっと柚も死んじゃいそうだし。しがみついてでも生きなきゃ。俺はもう一人じゃないし守るべきものがいるんだってこっちに帰ってくるまで何度も繰り返し思ってて…って柚!どうやってここまで来た?!杏奈は?!」
私はそっと離れると近くの椅子に座った。
「杏奈を保育園送ってからお兄ちゃんが高速で送ってくれた。めっちゃぶっ飛ばしてくれた」
法外速度だったっていうのは言えないけどね
「あーそうなんだーおに、壮志君にも助けられたねーごめん心配かけて」
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