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平原に布陣するイーブジャーラ軍。
その軍勢の中心であろう、城塞から都市部と繋がる入口となる門周辺から、何やら狼煙のような黒煙が上がっていた。
立ち上る煙の元へ視線を移せば、赤い炎が見えており、俄に騒がしくなっているのが、かなり離れているレイモンド達からでも分かるくらいにはっきりと見えていた。
「なんだ?火の不始末でも起こしたか?」
「いや、そうでも無さそうじゃ・・・。火元に誰も手を出そうとしとらん。」
これだけの人数がいれば、火消しに動くだろう筈が、炎を避けるように密集していた兵達が動いているのだ。
「魔法兵の部隊が居らぬようじゃな・・・。出兵しておる兵の中に魔法兵は多くなかったと思ったが・・・。」
「魔法使えるやつが居るなら、あの程度、ボヤ騒ぎにしかならないだろうものだが・・。」
「・・・黒猫。よく探ってみな・・・。炎が上がっているあの場所の他に、同じような魔力があちこちに感じられる・・・。」
異変を客観的に見ていた阿縷儀と黒猫だったが、神妙な面持ちで魔力探知を促したレヴィエルの様子に、やはり只事ではないと慌てて魔力感知を行う。
そして気付いた。
「・・・なんじゃこの魔力の数・・・。」
「しかも、同質の魔力という事は、全て同一人物か個人が放った魔法ということか・・・。」
「密集しているとは言え、この布陣の至る所に魔法を放つなんぞ、とんでもない奴じゃな・・・。」
平原に広がるイーブジャーラ軍の陣から、点在する魔力を感知した2人は、険しい表情を浮かべて呟いた。
魔力感知が得意では無いレイモンドには彼等のように正確に魔力を捉える事は難しいが、目の前に広がるイーブジャーラ軍のあちらこちらから魔力が感じられるという事は何者かから攻撃を受けているのかと疑問が浮かび上がる。
「・・・レヴィエル。」
「今、下手に動けないよ。何者かから攻撃を受けてるなら警戒が強まってるからね。」
レヴィエルの名を呼んだレイモンドに対して、次に出てくる言葉を予想していたかのように答えるレヴィエル。
「違う。逆にチャンスだ。」
「・・・様子を見て混乱に乗じて、ってとこかい?」
「そうだ。」
レヴィエルの話を聞いてレイモンドは首を横に振り、今がチャンスと言い出した。
それに驚きもせずその真意を問い掛けたのは、その考えがレヴィエルにもあったからだろう。
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