ミェンリォ防衛前哨戦

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火の手の上がるイーブジャーラ陣営、それは次第に感知していた魔力のある場所からも確認できるようになったのは、レイモンドとレヴィエルのやり取りから数秒してからだった。 「・・・随分と慌てているな。明らかに攻撃と見て間違いないだろう。」 次々に噴き出す溶岩のように立ち上る火柱に、慌ただしく動き回るイーブジャーラ兵達。 予期していない炎であり、その炎に焼かれていく兵達もいることから、何者かによる攻撃とレイモンドが判断したのと同時に、レヴィエルと黒猫(カェザル)がレイモンドや阿縷儀、シエル達を守るようにして3人を挟む形で素早く移動していた。 「「〝拒絶障壁(ガスタルウォール)〟!!」」 魔法の詠唱と共に、レヴィエルと黒猫(カェザル)の正面に半球体の青白い透明な膜が現れた。 その直後、レイモンド達の周囲に凄まじい炎の渦が巻き起こり、一瞬にしてレイモンド達は炎に包まれていった。 「あっぶな・・・。一瞬、反応が遅れてたら灰になってたとこだわ・・・。」 「・・・魔力感知に突然あれだけの反応が引っかかれば、流石に動けるだろう・・・。」 拒絶障壁(ガスタルウォール)。魔力による防壁を展開する魔法だが、単純に魔法を防ぐだけではなく、透明な膜は物理すらも防ぐことが可能な、読んで字の如く周囲を拒絶する盾を出現させる魔法である。 炎に包まれる直前、レヴィエルと黒猫(カェザル)は周囲に夥しい数の魔力の塊を感知したのだが、それが魔法なのか魔力を帯びた何かなのかまで判断出来なかった。 そのため、拒絶障壁(ガスタルウォール)を発動したのだが、防御性能が非常に高いのと引き換えに消費される魔力は莫大である。 今のレヴィエルでは障壁を維持できる時間はおおよそ30秒。並の人間の魔法使いならば、10人程度が魔力を注いで発動、ようやく維持出来るような、途轍もない量の魔力が消費される魔法。 それを個体で、たった1人の魔力で補っているだけで、レヴィエルや黒猫(カェザル)が人間からかけ離れた魔力を持っているのは明白。 「きゃあ?!」 「・・・敵襲か?」 だが、それを知らないレイモンドや阿縷儀からすれば助かったのただ一言に尽きる一瞬の出来事であり、周囲を探るには十分な時間だった。だった。 小さく悲鳴を上げて頭を抱えるシエルには、戦力としての力量が無い事が分かるその一瞬の内に、阿縷儀は背中に携えた太刀を握り締め構えていた。 「切り込む!」 「駄目だっ!まだ来る!」 阿縷儀が飛び出そうと叫ぶも、レヴィエルが更なる追撃を感知し、障壁を展開したままそれを止める。 周囲を埋め尽くす炎の壁、その向こうからは炎を貫かんとして放たれている無数とも思える量の石の槍が飛んできていた。
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