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「〝穿つ石槍〟?!」
「多過ぎるのぉ!!」
壁とも見紛う周囲を覆う炎の先、レイモンド達を貫かんとして無数の石槍が全方位から襲いかかって来ていた。
「数だけならどうにかなるけど!止めるだけで精一杯かもしれないよ!」
「止まるならよい!叩き落とす!」
「・・・踏ん張り所だな。」
レヴィエルと黒猫の眼光が鋭さを増す。それと同時に周囲に展開された障壁が強い光を放ち始めた。
拒絶障壁に込められた魔力が増幅されたのだ。それと同時にレヴィエル達の魔力消費量も増大している。
消費された魔力に比例して強固な障壁は厚みを増し、更なる堅固な壁となり。全方位から飛来する石槍を全て受け止め、阻んで見せた。
しかし、障壁を貫かんとして放たれた石槍は阻まれて尚、砕けもせず弾かれもせず、突き刺さったかのように宙に留まっていた。
魔法や魔術は放たれた時点から術士より離れれば離れるほど、指向性や持続性は失われていく為、有効的に使える距離や範囲が限定されていく。
たった今、宙に留まった穿つ石槍も例に漏れず、射程距離は決まっているのである。
獲物へ向かう指向性は保たれ、槍としての形も失われない持続性が保たれているとなれば。
「・・・あぁ、やっぱり防がれちゃったか。」
術士は確実に近くに居て、魔力は注がれ続けていると、石槍を防いだ瞬間にレヴィエルが確信したと同時に、その声はまるで耳元で囁かれたようにはっきりと聞こえてきた。
どこか幼さの感じられる、少年のような声。場にそぐわない軽々しく棘のない声。
「〝連・断・壊・閃〟!」
レヴィエルの隣に立っていた阿縷儀が叫び、構えていた野太刀を横薙ぎに振るう。
野太刀の刃先が石槍の一つに触れたその時、レヴィエル達の正面で障壁に阻まれていた石槍が次々に砕かれ、弾け飛んでいった。
「おっと・・・。そんな事も出来るの?予想外だなぁ・・・。」
砕け散って塵煙舞うその向こうから、あどけない子供の声が聞こえてくる。
殺伐としたこの場にそぐわないその声。その主たる者の姿が煙が晴れていくと同時に露となっていった。
「・・・随分と軽々しく出てくるもんだねぇ・・・。」
「・・・何者じゃ、この童子・・・。」
透き通るほどの純白のローブに身を包んだ、神々しい煌めきを放つその姿は平凡な子供では無いのは一目瞭然。
そして、普段から飄々としている阿縷儀が険しい表情を浮かべて睨みつけているのが、只者では無い確信を持たせるには十分だった。
そこまでは考えたレイモンドだが、目の前の子供が何者かなど全く予想も出来ない一瞬の内に、レヴィエルは結論を出していた。
「・・・こいつ、神魔族だね。」
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