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ギア達の前に現れた鱗毛鳥魔種の背から顔を出した人物。神魔族のゼクスを確認したその瞬間、即座に構え、魔力を練り上げ、戦闘態勢を取るギア。
その背後に立つサイスもまた、爆発的に漲るギアの魔力を感じ、現れたのは敵と判断し身構えた。
「何故、貴様がここに居る?」
「・・・手間ですが説明はします。とりあえず怪我人に影響を与えかねないので、さっさと殺意を抑えていただけますか?」
今にも破裂しそうな魔力を抑え込むかのように、歯を食い縛り睨むギアに対し、ゼクスは涼しい表情で見下ろしながら、落ち着かせようと両手を上げて敵意が無いことを表した。
「信用出来ん。」
しかし、それを鵜呑みに出来る筈もないギアは、吐き捨てるようにそう言い放ち、全身を凍てつくほどの魔力で覆い尽くした。
「・・・勘違いされては困る。」
ひとつ溜息を吐き、ゼクスは間を置いてぽつりと零した。
「その殺意と魔力が、欠片を砕き潰す可能性があるから止めろと、命令しているんだ。」
敵意を剥き出しにしてゼクスの話を聞こうともしないギアに対し、ゼクスはそう言って目を見開いてギアを見据える。
口元だけが僅かに緩み笑みを浮かべているように見える表情とは裏腹に、金色の瞳の奥は底の知れない深く暗く冷たい闇を映すように漆黒に染まり、不気味極まりない顔だった。
「落ち着け、ゼクス。脅してどうなるのだ。」
背筋が凍り付く感覚を背負ったまま、睨み合うギアとゼクス。そのゼクスの背後からギアには聞き覚えのない男の声が聞こえてきた。
「・・・そうでした。目的を忘れるところでしたよ。」
その声の主に対して、ゼクスは僅かに俯いてそう言うと、背後に半身を向けるように立ち直り、先程の不気味さを放っていたのが嘘のように柔らかな視線をギアへ向けた。
「伝令通り、王と将軍をお連れしました。こちらで保護されるんでしょう?」
「・・・捻じ曲がった情報だ。保護ではなく、捕虜の間違いだ。」
「どちらでも結構。ズェーレ本国にいるよりも恐らくこちらの方が彼等にとっては安全ですから。」
静かに会話は交わされているが、少しでも妙な行動が目に付いた瞬間に殺してやると言わんばかりに、じっと視線を逸らさず睨み付けるギアを他所に、ゼクスはそっと手を下ろす。
すると鱗毛鳥魔種は体を休めるかのように脚を折り、ゆっくりと首を下げたのである。
鱗毛鳥魔種が地面に付すと、その背中に乗っているゼクスの後ろから、身綺麗な貴族と思しき風貌の初老の男性と、まるでミイラのように全身の至る所に包帯を巻かれた男性を肩に担ぐ野盗らしき風貌の男性が降りてきた。
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