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「・・・貴方は王になる素質を持った者、そしてここはかつて王が居た場所です。私は、その王が王たる由縁、手段です。」
暫しの沈黙の後、寒さに身震いをした時、球体はそう言った。
しかし、寒いわけだ。
こんな状況で、私は肌着程度の布切れ一枚しか身に纏っていないのだから。
そう思えば身震いが止まらなくなっていく。
寒さを堪えながら私は球体の次の言葉を待った。
『こうして会話できるのも残り僅か、質問に対する答えは簡潔ですがこれです。』
「い、いや、分かり、辛いど、ころの───。」
『レイモンド、貴方にはやってもらう事がある。』
此方の事などお構い無い、そう言わんばかりの勢いで球体は語り出した。
───今一度、かつての王が成そうとした事を人間である貴方に託す。
───争いだらけのこの世界を、本来はそうではなかったこの世界を。
───どうか救って───。
か細い声は更に細く、消え入りそうな哀しげな声でそう言うと、球体は徐々に輝きを失い、玉座に降りていく。
───貴方はこれから、ここから、王となるべく戦う。
───零になってしまった貴方に、私も沿わなければならない。
───いつかまた、こうして話す日が来る事を願っています───。
『戦歴、経験、情報、全てが初期化されました。新規承認を行います。』
『承認完了、新規マスター、レイモンド・マクスウェル。これより融合を行います。』
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