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「どうしてそんなこと言うんだ」
「ふふ、何となくだよ、あなたは優しい人だね」
「俺は……鬼だ!」
そうして俺はなぜか、ヒナの家から飛び出した。
まだ茶碗には残っていたけれど、このままここにいてはいけないと思った。
このままここにいたら、もしかすると俺はヒナを食べてしまうかもしれない。
もしかしたら、もしかしたらーーーー。
そんなおかしな逡巡をいくらも巡らせ、俺は山を駆け上がった。
切れることのない息をし続け、いくらも走り抜け、山の頂上へ来てやっと足を止めた。
見下ろすとヒナの家は小さくて、人間はまるで米粒のよう。
そんな人間に、俺は優しくされてはいけない。
こんな生き物は、好いてはいけない。
人間などへ、好意を持っては、いけない。
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