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「……食べて欲しいのか?」
生唾が口を湿らせる。
感情だけがそれだけはいけないと止めて来るから、俺はじっとヒナの答えを待った。
するとヒナは満面の笑顔を浮かべ、頷いた。
「お友達になりたいの」
「何だよそれ」
「私は……福の神だから」
「は?」
「あなたと一緒、一人ぼっちの福の神」
何の冗談を言っているのだろうか、何処の人間の馬鹿話なのか、俺は空いた口が塞がらないと言わんばかりに無意識に口を開き、ただじっとヒナを見つめた。
ただその時ふと脳裏に浮かんだ。
ヒナは、いつだってこの衣装だ、いつ見ても一人だ、この家へ訪れる人間どもと、会話を“交わしている”のを見たことがない。
こいつが、ヒナが、人間と一緒に過ごすところを一度も見ていない。
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