第一幕 今日からパックマン

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 俺はパックマンになってしまった。  認めたくないが、認めるしかない。  タコさんウインナー似のモンスター――確かゲームでは「ゴースト」という名前だったはずだ――に捕まって殺される経験をした俺は、これが夢ではないと身をもって痛感していた。  パックマンは子供の頃に遊んだことがあるが、確かスタート時点で残機は3つ。1回死ぬごとに残機が減り、3回死んだらゲームオーバーだったはずだ。  つまり、俺の命は残り2つ。あと2回死んだらゲームオーバー。  ……ゲーム―オーバーになったら、俺はどうなるんだ?  モンスターに捕まったとき、俺は急速に生命力を失い、体がしぼんで消滅した。  消滅……。そうだ、きっと俺は消滅してしまうんだ。ゲームオーバーになったら、俺という存在はこの世から消えてなくなってしまうんだ。  そう思うと、途端に俺は死ぬのが怖くなった。  俺はヒキニートで毎日だらだらと無為に過ごしてはいたが、それは何もしたくなかったからで、生きることをあきらめていたわけじゃない。俺は死にたかったわけじゃないんだ。  嫌だ! パックマンになってゴーストに食われて死ぬなんて、そんな死に方は絶対嫌だ!   俺はこんなところで死にたくない! 俺は生きて元の世界に帰りたい!  ……だが、元の世界に戻るにはどうすればいい?  これが漫画やアニメなら、ゲームをクリアすれば脱出できるのがお約束だ。  そうだ。きっと、ゲームをクリアすれば終わるんだ。ゲームをクリアすれば、元の世界に帰れるに違いない!  ……やってやる。  パックマンのゲームをクリアして、俺は元の世界に帰ってみせる!
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