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俺はパックマンになってしまった。
認めたくないが、認めるしかない。
タコさんウインナー似のモンスター――確かゲームでは「ゴースト」という名前だったはずだ――に捕まって殺される経験をした俺は、これが夢ではないと身をもって痛感していた。
パックマンは子供の頃に遊んだことがあるが、確かスタート時点で残機は3つ。1回死ぬごとに残機が減り、3回死んだらゲームオーバーだったはずだ。
つまり、俺の命は残り2つ。あと2回死んだらゲームオーバー。
……ゲーム―オーバーになったら、俺はどうなるんだ?
モンスターに捕まったとき、俺は急速に生命力を失い、体がしぼんで消滅した。
消滅……。そうだ、きっと俺は消滅してしまうんだ。ゲームオーバーになったら、俺という存在はこの世から消えてなくなってしまうんだ。
そう思うと、途端に俺は死ぬのが怖くなった。
俺はヒキニートで毎日だらだらと無為に過ごしてはいたが、それは何もしたくなかったからで、生きることをあきらめていたわけじゃない。俺は死にたかったわけじゃないんだ。
嫌だ! パックマンになってゴーストに食われて死ぬなんて、そんな死に方は絶対嫌だ!
俺はこんなところで死にたくない! 俺は生きて元の世界に帰りたい!
……だが、元の世界に戻るにはどうすればいい?
これが漫画やアニメなら、ゲームをクリアすれば脱出できるのがお約束だ。
そうだ。きっと、ゲームをクリアすれば終わるんだ。ゲームをクリアすれば、元の世界に帰れるに違いない!
……やってやる。
パックマンのゲームをクリアして、俺は元の世界に帰ってみせる!
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