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藤田はそれだけ言い残すと、颯爽と店を出て行ってしまった。 残された琴音は、何となく冷えたコーヒーを口に含む。 (すごい一日だった。) (たくさんの出来事がありすぎた。) 琴音は藤田からもらった靴に視線を向けると、小さく呟く。 「本当に契約なんてして、良かったのかな。」 琴音は藤田のことを考える。 会社で見た、エリートサラリーマンの姿。 さっき見た、悪魔の様な笑みを浮かべる男。 (でも・・・、『変わりたいか?』と問いかけた藤田さんの目は、とても真剣だった。) 琴音は靴の袋をぎゅっと抱きしめると、そっと呟く。 「うん。信じてみよう。」 今まで勘違いの中で生きてきた鈴木琴音、29歳。 微睡の様な日々が今日終わったことを、琴音はまだ自覚していなかった。
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