シミ

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「おはようございます。」 ICHIMIYAのオフィスに入ると、琴音は近くにいた同僚に声をかける。 それから自席の方を見て、息をふっと吸い込んだ。 (藤田さん、もう来てる・・・。) 琴音の隣の席となった藤田は、既にPCを開き、何やら作業をしている様だった。 (大丈夫、指令はクリアしたし!) 昨夜、ボロボロになって帰った琴音は、力尽きそうになる自分を奮い立たせて、ニュースアプリ(有料)を契約した。その為、今日は朝から重要なニュースは目を通すことができたのだった。 (よし。) 琴音は小さく頷くと、自席に近づく。 そしてにっこりと微笑むと、藤田に挨拶をした。 「おはようございます。」 「おはよう。」 藤田はちらっと琴音を見る。 そしてすぐに作業に戻ってしまった。 (拍子抜けしたかも・・・。) 琴音が内心ほっとしながら鞄の中身を出していると、ブルっとスマホが振動する。 「?」 何気なく画面を見て・・・、琴音は固まった。 『今日のファッション=-5点。』 琴音は自分の目を疑って、まじまじと液晶画面を見つめる。 何度読んでも、今日のファッションが-5点と読める。 (点数低っ!そもそもマイナスってあるの!?) 今朝、琴音は散々悩みながら、シンプルなAラインのスカートに、Vネックの白シャツ。更に可愛らしいキラキラのボタンが付いたカーディガンを羽織った。 指示通りピンクは着ていないし、シンプルで年齢相当だと思っていたのだが・・・。 あんぐりと口を開く琴音の横で、藤田がスマホを操作する。 再び琴音のスマホがブルっと震える。 『せめて、その少女趣味なカーディガンを脱げ。』 『あと、渡した靴履かなかっただろう。あとで見てろよ。』 ひゅっと琴音の喉が鳴る。
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