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企み
待ちに待った大事な日は、朝から晴天だった。
「外商日和だわ。」
ぼそっと呟いたのは、外商の中でもNo.1の実力を持つと言われる田中だった。
紺色の上下スーツをびしっと着た田中は、お目当ての部屋の前で、背後に控える販売員に声をかけた。
「くれぐれも粗相のないように。」
「はい。」
今回見繕ったメンバーは、婦人服売り場、下着売り場、靴売り場のそれぞれ精鋭。更にただ荷物を運だけのスタッフも含めて総勢6人。
!
田中は無表情のままインターホンを押す。
すぐにドアが開き、藤田が顔を出した。
「ご苦労様。」
「本日はよろしくお願い致します。」
深々とお辞儀をした田中を一瞥すると、藤田はさっさと家の中へ入ってしまう。
田中は今度は盛大に後ろを振り替えると、案の定、スタッフ達が頬を染めた状態で藤田の後ろ姿を見つめていた。
「くれぐれも粗相のないように・・・。」
田中から発せられた低い声に、スタッフ達の肩がびくりと揺れる。
スタッフ達がこくこくと頷くのを確認した後、田中は家の中に足を踏み入れた。
広々としたリビング。
掃除は行き届いているが、少し無機質な印象を与える部屋の中に琴音がちょこんと座っている。
その姿が視界に入った瞬間、田中は歓喜した。
(まあまあまあまあ!!!)
田中はにこりと微笑んでみせると、琴音に挨拶をしながら、怪しまれない程度に、しかし最速で琴音に近付く。
(思った通り!変わっているわ!)
琴音は、今日も田中がこっそりセレクトした服を着ている。しかしどこか決まっていないのは、琴音の体型変化が原因だ。
明らかに痩せたのは確かだが、それだけではない。
ボディラインが、変化している。
(出るとこは出ていて、引っ込むとこは引っ込んでるわね。うふふ。どんなお手入れをされたのかしら。あー、早く裸を拝ませて欲しいわ。というか、さっさと剥きましょう。)
上品そうな微笑みの下で、こんなことを考えられているなんて想像もしていない琴音は、恐縮しながら頭を下げた。
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