第1章

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驚くその人は、膝に弁当を乗せ、まだ包みをほどいていなかった。その手には洒落た小箱が乗っていた。中からチョコレートを親指と人差し指でつまみ口に入れる寸前で俺が待ったをかけたんだ。 そして今、チョコレートを手に持ったまま、隣に座った俺を見てる。 「取り敢えず、それ、箱に戻して下さい。」 「あっ…は、はい。」 「手についたチョコレートは舐めないで下さい。」 「は、はい。」 鞄から携帯用のウェットティッシュを取り出して手を拭いた。なんと…そんな物を持ち歩いているのか…すげぇな。感心してしまった。 「えっと…あの、練り込み屋ってご存じですか?」 「ええ、さわり程度ですが、知ってます。国家資格ですよね。」 「そうです。だから、偽物も分かるし、何が練り込んであるのかも分かります。」 「凄いですね。それで、あの…このチョコレートに待ったをかけたのは、何か見えたのですか?」 洒落た小箱を両手で持って俺に見せた。
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