第1章

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俺は自分で《禅_zen_》という練り込み屋を経営している。職人が11人と事務員2人。小さな会社だが仕事は順調だ。 今回の依頼を受けるか決める為に俺と他に職人2人を連れて依頼宅に向かった。一緒に行く職人は山瀬と守川。この2人は職人歴も長く、と言っても俺よりは若いが今回のような厄介な依頼にも対応出来る。 「社長。受けるんですか?」 守川が移動する車の中で依頼書を見ながら言う。山瀬も興味深げに依頼書を覗く。 「いや、まだ判断出来ないな。実際に見てみないとな。その依頼書が100%その通りだとは限らないだろ?何事も確認を怠るなよ。」 はい、と返事をする2人に笑いながら、いい返事だと誉めると確認は大事だぞと2人で言い合う。俺のところにいる職人は皆、素直で人柄がいい奴ばかりだ。俺は人に恵まれている。 依頼宅に着いて、家の周りを見て歩いた。何か変だ…。 「おい、山瀬、守川。どう思う?」 「何だろう…練り込まれているのは邪念ですか?」 「社長、俺もそう思う。」 更に山瀬と守川は、この仕事、偽者じゃないですよねと俺に言った。
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