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 とりあえず席をもどして、課題曲を続けて詰めてゆく。 「ねぇ、すずくん。ぼく、自分を鳴らすの得意でもモノを経由するのは苦手なのかも…」  どうしても、涼音の言うように抑揚がうまくつかないので譜面台に寄りかかって楽譜とにらめっこする。 「モノを経由って……」 「…だって、すずくんみたくいかないんだもん。歌う方が簡単」  むぅーと唇をタコみたいにしていると、隣から笑い声が聞こえてきた。 「俺は歌う方が難しいな。自分で音を当てなきゃいけないだろ?ピアノは叩けばその音がなるからな……それに、直で心覗かれるようで……」  真面目に言って笑う涼音に珠華は首を傾げた。 「すずくんのピアノはすずくんの心を見せてくれると思うけど…?」 「………そりゃ、ありがとよ」  本気にしてないように笑って言われて、納得のいかない珠華はちょっとむすっとなる。
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