0人が本棚に入れています
本棚に追加
「すずちゃーん、珠華ちゃーん、クッキー貰ったから食べにおいでー」
丁度レッスン時間が終る頃に声がかかった。
「だってよ、教本片付けて先行ってくれ…おばさんウルサイから…」
「りょーかい!すずくんも早く来ないと和歌センセ呼びに来るからね!」
疲れきった溜め息の涼音に笑ってから部屋を出た。
教室にしている部屋の奥、居住スペースへと進むと広いリビングのソファーにクッキーを囲んで上品なお婆様とおば様が座っていた。
「和歌センセ、大センセお待たせしました」
「お疲れ、珠華ちゃん。ホラおいで」
手招きするのは七瀬ピアノ教室のもう一人の講師で涼音の叔母の和歌(わか)。
「珠華ちゃん、甘いもの好きだったと思ってね…たくさん食べてちょうだいな」
そっとコーヒーカップを置いてくれたのは、ピアノ教室を始めた大先生こと和歌の母で涼音の祖母、詩乃(しの)。
「ありがとうございまーす!…これ、コーヒーじゃないんですね、美味しい。クッキーもしっとりしてて…しあわせです!」
「もー、珠華ちゃんのしあわせ安すぎよ!」
ガバッと抱きしめて頭をグリグリ撫でられる。
最初のコメントを投稿しよう!