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部屋に戻り男の人が声をかけて来る。
「じゃ、脱いで」
震える手で制服のボタンを外そうとしたら、男の人に制止された。
「違う、違う、脱いで欲しいのはスニーカー」
「え?」
男の人はバッグからブランド物の真新しいスニーカーを取り出し、私に差し出しながら話しを続ける。
「このスニーカーとさ、君の履いているスニーカーを交換して欲しいのだよ」
「で、でも、10万円って」
「うん、だからスニーカーの代金が諭吉10枚。
裸足で帰らせる訳にはいかないから、代わりのスニーカーとしてこれ」
「か、身体は?」
「君まだ16歳だろ。
君の前には輝ける未来が待っている。
1度や2度失恋したからって、そんな事で身体を売るなんておかしいよ。
輝ける未来に到達するまでに、人は何度も壁にぶち当たり挫折する。
だからそれを糧に、前に向かって歩を進めれば良いのだ。
まあ、匂いフェチの変態の俺が言っても説得力なんて無いかも知れないけど。
さ!
送って行くから履き替えちゃって」
男の人は、私が履いていたスニーカーを渡されたスニーカーに履き替えると、10万円を私に渡し、スニーカーを鼻に当て匂いを嗅ぎ、ビニール袋に入れ密封してバッグにしまう。
ホテルをチェックアウトする、その時男の人はフロントで大きな紙袋を受け取っていた。
車で家の近くまで送ってもらう。
車を降りた私に、男の人は大きな紙袋を私に手渡しながら話す。
「はい、これ。
お母さんにちゃんと謝るのだよ。
じゃあね」
紙袋の中には、お寿司屋さんの折り詰めが10箱入っていた。
私は遠ざかって行く車のテールランプに向けて頭を下げ、お礼を口にする。
「ありがとう、スニーカーの神様」
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