ようこそ下宿屋へ

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母親は何も気付かずいそいそと引越しの支度をしている。 見る限りでは、引っ越すのはすぐだろう。 『ご入学前からでも入居できます』と間取りとともに書かれた紙を、キッチンの台の上に置き、姿を消す。 ここの中学からなら、下宿からでも卒業式には通えるだろう。 それにしても、今まであの子供が憑けてきても何とかなっていたのは、あの祖母のお陰かもしれない。それとは別に、元々のイタコ家系だったのであれば、その素質が継がれているのかもしれないが、あの気性ではどれだけ優れた能力があっても、宝の持ち腐れだ。 三月になれば神社の千年祭祭りがある。 それまでには、何とかしたいものだが。と少しだけ考え、学校へと戻る。 「少しばかり婆さんに押し付けられた感はあるが、少し離れただけでもう札が破れそうだねぇ」 周りにいるものを蹴散らし、新しく札を貼ってから下宿屋の自室に戻り、昼寝をする。
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