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「情けないだろう」と、弱々しく微笑む姿に大魔王の片鱗は見られない。びっくりしすぎてポカンと彼をみつめる。
「君が生徒会室で髪をおろして眼鏡を外した姿を見て、あの日見た彼女は君で間違いないと確信した。
眼鏡を掛けている君は凛として隙がなくて。でもそれらを取り払った君の姿は、ひどく無防備に見えたんだ」
だから別の日に髪をおろして生徒会室に現れたわたしを見て、その無防備な姿を他の生徒にもさらしていたのかと焦ってしまったらしい。
「自分だけが知っている君の姿を、他の者に知られたくななかったんだ。全くもって身勝手な理屈だな。
俺の傲慢な想いのせいで、君を傷付けてしまった。本当にすまなかった」
痛みをこらえるような表情で、苦し気に謝罪を口にする。会長が謝罪する姿を初めて目にして、驚いてまじまじと顔をみつめてしまった。
「あの日、山茶花の前で佇んで君は何を想っていた?」
わたしを腕に抱いたまま尋ねてくる会長は、頬に緊張を走らせている。
どうしよう。ちゃんと正直に答えた方がいいよね。
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