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夢を見た。
数々の出会いと別れ、幾多の戦い、数多の冒険。
記憶が光の束になって流れてゆく、幾千幾万の記憶の光が連なり、別れては一つの頂を目指して駆け抜けていった。
目を閉じるとそこには、かつての在りし日の光景が次々に浮かび上がっていく。
ここで過ごしたあの日常は、かけがえのないものだったと今になって実感する。
辛く苦しい時があった、重圧に押し潰されそうな時もあった。しかし、その度に立ち上がっては支えてくれる仲間がいた。奮い立たせてくれる友がいた。
温かく、心を照らす力強い繋がりが確かにそこにはあった。
そう、あったのだ。確かにそこには、その繋がりが……あった筈だった。
目の前には惨憺たる光景が広がっていた。
艦内に鳴り響く非常警報のサイレン、避難を勧告する機械的なアナウンス、血溜まり、死体、炎、それらはもうどこにもあの日常は存在しないのだと、無くなってしまったのだという現実を実感させるには充分すぎた。
仲間だった肉塊があちらこちらに転がっている、中にはもはや原型を留めないほどに損壊が激しいものや、恐怖に耐えかねてか自らの命を断ち切ったであろう者の死体も散乱している。艦内に生存者は恐らく誰もいないのだろう、いや艦内のみならず外の世界も恐らくは……
外へと飛び出す、やはり外も艦内と何も変わらない。街は炎に包まれ、人々の悲鳴がある種の聖歌のように鳴り響いている。それは邪教を信奉する狂信者達の讃美歌であり、偉大なる主神に捧げる供物なのだろうか。もはや人と呼べるようなモノは存在せず、この世のものではない存在が全てを破壊しては食い散らかしていた。
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