三丁目のぼく

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ぼくを含めて、此所に居る全員が首から札を下げていた。 4㎝四方のその札は、その人の行く先を示している。 大抵の人のものは美しい青空の色、だそうだ。 残念ながらぼくは空の青なんて忘れてしまったし、何もかもが夕焼けの赤にしか見えないから、それは誰かに聞いた話。 ぼくの札には『三』の文字が刻まれていた━━━ 此処は三丁目の分かれ道━━━ 近付いて来た男の胸に下がった札を改めた。 ……ぼくと同じ黄色(らしい)に黒で『三』の文字…… 男の首は皮一枚で繋がり、常に左手で支えていないと今にも落ちそうだ 彼は傷口からじくじくと血を流しながら取り憑かれたように同じ言葉を繰り返す。 「…ごめんなさい…ごめんなさい…」 ぼくは応えることもなく左手に建つ門を指差した。
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