チョコレート・フライト

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 彼は同僚と一緒に先住民に連れ去られてしまったのだ。担ぎ上げられて。同僚は何も反抗せずにおとなしく連れ去られている。 「お、おい」 「なんだ。これ」 「誘拐、かな」 同僚は静かに答えている。  チョコレートの林を抜けていく。足下のチョコレートはぬかるんでいてグチュグチュと泥みたいな音を立てている。  彼は必死に目をつぶってその視界と音の暴力に耐えようとしたが、音の暴力がなくならず、次第に意識が遠くなっていった。体が中心に吸い込まれてそのまま彼の意識は宇宙と一体になる。要はチョコレートで気絶したのだ。 「はあ、強がりの割には早いな」 同僚はため息をついた。
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