チョコレート・バイバイ

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 同僚は頭を下げる。 「いや、謝って済む事じゃ無いって。いや、ちがう。本当。え、なにこれ。いやいやいやいや。てか俺ら同性じゃん」 「ここの生命体には雌雄が存在しないんだ。だから間違えられたらしい。いや、別に俺は良いんだぜ」 「いやお前が良いとかそういう理由じゃないわ。僕が無理なの!100歩譲って同性はいいとしよう。だがお前は無理だ!なんでそんな出会ったばかりのお前と婚約しなきゃいけないんだ」 と、そこで彼の頭は今までのことを整理しようとした。  よく見ると自分の寝かされているベッドはダブルサイズだ。それに目が覚めたら手料理なんて、どこの少女漫画だ。 「まあ、そんな事を言わずに。落ち着いて」 「落ち着いてられるか!何だよ、チョコレートっていうだけで卒倒しそうなのに、初フライトで墜落して、それに先住民に誘拐されて。挙げ句の果てに出会ったばかりの男と婚約しなきゃいけなくなって、何だよ!くそっ!」 同僚が背中をそっとなでた。なんだ、良い嫁でも演じてんのかこいつは。彼は地面を殴った。 「いいから、もうすぐ地球から迎えが来るはずだから。それまで辛抱してくれ。すまない」 「迎えが、来るのか」 彼は涙目で問いかける。  同僚はその瞳に何か突き動かされた気がした。 「ああ。もうすぐ」 同僚は彼の手を取った。 「おいで」 二人は外へ出て、林を抜けた。途中彼は何度も吐きそうになっていたが、同僚がその度に彼を落ちつかせていた。全く、良い嫁になりそうだ。 「ほら、あそこ」 同僚の指さす方を見るとそこには簡易的な宇宙船が止まっていた。 「え、本当に帰れるの」 「たぶん」 「おおーい」 この声は機長だ。機長が迎えに来てくれたのが嬉しかったのか彼は宇宙船に向かって走り出した。 「機長」 彼は宇宙船に飛び乗ると、くるりと向き直って同僚の方を向いた。 「お前は乗らないの」 「ああ、もうしばらくここにいることにするよ」 「そう、そうか、元気でな」 「ああ、お前もな。また会おうな」 しばらくお互い何も言うことがなくなって黙り込む。  二人とも出会ってからほんの少ししか時間が経っていない事など忘れているようだった。 「まあ、チョコレートが好きになったらまた来るかもな」 「はは、そんな日が来るのかね」
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