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「馬鹿にすんなよ」
「馬鹿になんてしてないさ」
と、同僚が彼の手を取った。そしてその手の甲に口づけを落とす。
「じゃあ、絶対好きになって来いよな」
「あ、ああ」
宇宙船の扉が閉まる。
彼はそそくさと中に入ってしまうと窓から同僚の姿を見つめた。同僚はいかにもといった風で宇宙船を見送っている。
「すまないな。あの後なぜか宇宙船が突然直って、修理のために早く地球に帰らなくてはならなくてな。お前を置いてきたこと、本当に反省している。って聞いてるか?」
「良いですよ、全然。悪いことばかりじゃなかったんで」
「はあ」
機長は首をかしげた。
彼は、今後チョコレートが好きになることも、同僚と再会することも、この星に漂うにおいが人間に恋に似た影響を及ぼすことも、まだ知らない。
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