第六夜 凶戦士 (後編)

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 突然目の前が輝きで満たされ、何かの文字が視界に飛び込んで来る。 「何だ!?……これは?」  痛みは無い。  胸にチクリと針かトゲでも触れたかというほど、気にもならない痛みはすぐに忘れてしまう。  それよりも気になり、目を背けられないのは目の前の文字だ。 【誓約】  ……  ……  …… 「俺がエンジュを護(まも)るよ」 「私はずっとレオンのそばに居るわ」 【二人でいつまでも一緒に居よう】  ……  ……  …… 「君たちは交わしたはずだ。二人だけの約束を、永遠の誓いをきっと。それを増幅する矢だ」  ジンは確証を込めて言った。  契りを交わした約束は、レオンとエンジュの中で増幅され、輝く光の渦となって身体を満たした。  柔らかく、月夜の淡いオーロラの揺らめきは、体内から湧き出るほどに身体中を輝かせ、  エンジュの身体を虚無の世界から解き放つ。それは透ける事なく伸ばされた両手の中に、夢珠を抱かせる。  虚無の空間から両脚が、つま先まで実体となって現れる。 「きゃあ!」  突然何かに引き寄せられて、エンジュは悲鳴を上げた。  浮力を失ったわけではなく、何か見えない力で引っ張り込まれた、空中に居たはずの身体は、ベッドの下に居たもう一人の存在、灰髪のレオンの腕に落ち、力強く抱き締められていた。
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