第六夜 凶戦士 (後編)

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   レンは振り抜いた大剣を引き寄せ遠心力を小さくして回転させながら見事な身のこなしをみせる。赤帽子を揺らしながら、大剣を最大重量に変え、床に突き立てる。それを支点として跳躍した身体を急停止させた。 「何だぁ?」  ジンの矢が当たったらしいのは解るが、光り出した敵と、降ってきた女の子の様子が理解出来ない。何故か目の前でイチャイチャ……はしてないが、抱き留められている。  頭にハテナ?を浮かべるレンを置いて、抱き合う二人。 「エンジュ!本当にエンジュなのか!?体が元に戻っているじゃないか!ああ、何が起きたんだ!」 「レオン、レオンなのね!ずっとまぼろしの中を彷徨っていたみたいだわ、レオンに触れてレオンの体温を感じてる!」 「エンジュの体、匂い、温もり、俺も感じているよ!」 「レオン!レオンレオンわたしのレオン!!」 「エンジュ!声が出ているよ、君の声がちゃんと聞こえる!聖夜の鈴の音よりも美しい、俺の耳の奥まで震える天使の歌声のようだ!」 「レオン……」 「エンジュ……」  ……  ……  ……イチャイチャしている。  レンが毒気を抜かれて惚けている。 「あー、うわぁー、あ、あーんなことや、ああんなコトまで、うひゃあー、さっきまで殺伐としてたのにいきなりラブラブだぁ~」  呆れて見ている。  本棚から降りてきたモーリスが走り寄る。レンの隣に立ち、 「あらあら、あんなに抱き合ってちゃ夢珠が潰れちゃうわ」  一緒に呆れる。
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