第六夜 凶戦士 (後編)

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 赤銅鎧は動きを止めて立ち尽くし、飾り物の鎧のように鎮座している。  レンがモーリスに尋ねる。 「何をしたんだ?」  モーリスも明確には分かり兼ねるようで、両肩を上げて首をすぼませた。 「ジンの言う通りにしただけよ。……とりあえず、もう敵意は無さそうね」  モーリスの声に、レンが戦闘態勢を解こうとした瞬間、男達の声が廊下から響いて来た。 「ジュン!小さい方もあっちに行ったぞ!」 「チョウサク走れ!このまま二体ともおびき寄せるんだ!」  廊下で邪夢と戦う護衛組の声だ。  レンとモーリス、離れた場所でジンが寝室の入口に目を向けると、こちらに背中を向けながら後ずさり、駆けるジュンとチョウサクの白装束達が現れた。  そしてそれを追って、二体の丸い邪夢が触手を伸ばし、這うようにこの部屋に侵入する姿が…… 「もうひと仕事残ってるなぁ」  レンが大剣を肩に担ぎ上げながら苦笑した。  頷いてモーリスはジンを振り返る。  本棚の上で立ち上がる青い帽子は、大弓を静かに構えていた。すでにマーキングとジュン達の援護を開始している。  モーリスは安堵して向き直る。両手に握るリングブレードが輝き出し、その大きさをふた回り大きく変える。輝きは失われないまま、輝くリングとして両手にあった。  モーリスは一つ大きく深呼吸をしてレンに言う。 「私が邪夢の動きを止めてみるわ。大きい方は多分長い時間止めてられないかな。ちょっと厳しいわね。レンは今の内に夢珠を使って」 「え、あの二人が持ってるやつかよ」 「他にないでしょ。ホラ、急いだ急いだっ」  活発に声を投げてモーリスは駆け出した。邪夢に向かって瞬速に消える。
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