第六夜 凶戦士 (後編)

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 レンがうな垂れつつ、ラブラブ組を振り向くといつの間にか背後に立っていたエンジュとレオン。 「うわっビックリした」  驚くレンにエンジュはしずしずと持っていた夢珠を差し出す。 「ゴメンなさい、これ、あなた達に返すわ」 「いいのかよ?」  レンが尋ねると、エンジュの隣に立っていたレオンが口を開く。 「このエンジュの声が出なくなったから欲しかったんだが、どうやら君たちのおかげで治ったようだ。だから君たちに返す。すまない。そしてありがとう、どれだけ感謝してもしきれない」 「よくわかんねーけど、遠慮なく貰うぜ。礼ならジンに言えよ、俺は詳しいことわかんねーし」  レンが夢珠を受け取りながら言う。レオンは本棚を見る。 「ジン、あの弓の戦士か。ぜひとも話したい!」 「今は邪夢を片付けるのが先、この夢珠、ちゃんと【コトダマ】の力使えるようになるのかなぁ」  レンが夢珠を見つめているとレオンが言った。 「君は【コトダマ】をまだ持ってないんだな。大丈夫、夢の内容よりも、その人間の素質や才能を元にして得られる力だ。良ければ手伝わせてくれ」 「あ、ああそりゃ助かる。頼むよ。あんた雰囲気変わったな」 「そうかな?自分ではよく解らないんだが、前に【マリオネット】の夢珠を使って以来、二重人格になってしまったようなんだ」 「レオンはこっちが本当のレオンよ。とても優しいの」 「エンジュ、口を挟むな」 「あら、先に挟んだのはレオンじゃない」 「ちょっとちょっと、ケンカはあとにしてよ。みんな待ってるんだ」  レンが慌てて止めた。 「よし、じゃあここに寝て、夢珠を胸の前に持って、直接身体に触れさせるんだ」  レオンが促した。レンが言われた通りに寝そべる。服の前を少しはだけて胸の上辺りに夢珠を当てがう。  レオンが静かに口上を紡ぐ。 「夢珠に願う、この者に言霊の力を、この者に言葉の秘めたる力を解くる鍵をその身に与えよ」  横たわるレンの手を上からレオンの手が押さえる。夢珠が光を放ち、丸い形を崩れさせ、液体の光をレンの身体に振り撒く。光は浸透しながらレンの体表を駆け抜け、全身を七色に輝かせる。  その光が波打ち、波紋を繰り返してレンの身体に満ち渡ると、静かに光が消えていく。光の波が落ち着いた時、レンは新たな力を手に入れていた。
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