第七夜 帰還

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 目の前にならぶ声優のコレクションは、漆原めぐみを中心に置きながら、男性のアイドル声優や今話題の女性人気声優も網羅している。その並びもこだわりを見せ、音楽から舞台までジャンル分けも抜かりない。その中で、漆原のポスターの前に、ポツリと空間を作ってある。いずれここに置くはずの、届く予定のコレクションのためのスペースだ。  オードリーはその時を想像して、歓喜の声を上げる。 「もうすぐよ!ジン様がここに漆原様のお土産を持って来てくれるわ……それは夢珠、きっと夢珠。ああ、早く帰って来てくれないかしら……ああ、待ち遠しいですわ~!」  オードリーが顔を赤らめて興奮していると、来客用の別室からドアを叩く音が聞こえて来る。 「オードリー、居るのー?おーい」  マサルの声だ。  オードリーは至福の時間を邪魔された事に少しムッとしながら、来客向けの顔を整える。  秘密の部屋を出て、隠し扉がキチンと閉まったかを確認し、鏡で自分の姿を見て、容姿を確認する。  問題なく確認を終えると、叩かれるドアを開いた。 「なぁに、マサル。新しいリスナー見つかったの?」  オードリーはニコリと笑い、ムラサキ帽子のマサルと顔を合わせる。  中に入れて貰おうとしたマサルが、その入口でモジモジしながらオードリーの笑顔に困惑する。住人には部屋に入れてくれる気配はない。  だがそんな事は可愛い笑顔を見ればそれだけで誤魔化される程の事だ。  何よりマサルは、あのケガ以来、以前より増してオードリーに従順だ。 「それがね、オードリー。やっぱり漆原のラジオをかかさずに聞いてそうな人間がこの近くには居なくて、電車で一駅移動すれば、居たんだけどね」
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