第七夜 帰還

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 伸縮性のある長い触手が床を叩く。その度に青い光の矢が触手に突き刺さり、その動きを縫いとめる。  脈動する体躯から新たな触手を生やした邪夢は、再び周りを囲む夢防人達を捕らえようと触手を振るう。  だが新たに触手を増やした瞬間に、青い光の矢がまたも突き刺さり、触手に光のマーキングを施す。  マーキングされた触手は闇夜の部屋でも視認しやすく、夢防人達は難なくその攻撃を躱す事が出来る。  躱された触手は床を叩く。  いつしか動きを制限された邪夢は、不快な声で不満の意思を奏でていた。  モーリスは手にした光のリングを邪夢達に投げた。そのリングは瞬く間にサイズを数十倍に広げ、邪夢の身体に輪投げの的のように収まる。  丸い体躯にリングを付けた惑星を思わせる姿が二つ、夢防人達の目の前に出来上がる。 「リングの中心には光の力を集中させてあるから、しばらくの間はコレで動けないハズよ!」  モーリスの声にジュンとチョウサクが武器を手に突撃する。  触手を縫い付けられ、リングの力で動きを抑制された邪夢は苦しみの不協和音を撒き散らす。  その体躯に剣と槍が交互に突き立てられる。トドメとばかりにジンの青い閃光が走り、邪夢の核とも言える『眼』を貫き、ソフトボール程の小さい邪夢は、闇色の光の粒になってその体躯を崩壊させた。  その隣で同じようにリングの阻害を受けていた、ハンドボール並みに大きい邪夢が大量の触手を全方位に向かってつき伸ばす。巨大なウニかイガ栗に変貌した邪夢は、光のリングを破壊して動き出した。  モーリスが叫ぶ。 「ごめん!リングが大きくなると光の力が弱まるから、このサイズは長く持たないわ!散開して!」  ジュンとチョウサクが邪夢を囲みつつ距離を取る。
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