第六夜 凶戦士 (後編)

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 モーリスは赤銅鎧の振り下ろした凶剣を素早く躱して後方に飛び退る。自らの力で高めた敏捷性は赤銅鎧の動きに遅れを取る事は無い。  寝室の入口の方から誰かの声が聞こえる。焦っているのか、声が揺れて聞き取り辛いが、どうやら護衛組の声だ。  モーリスは一時的に距離を取り、戦況を見る。  レンが壁際で大剣を携えながら立ち上がる。  それを明らかな殺意を向けて睨むのは灰色髪の侵入者。黄金の長剣を構えているが、レンに向かって攻撃をするまでには至らない。先程のダメージがまだあるからなのだろう。  変わってモーリスの前に赤銅鎧。こちらは元気なようで今まさにモーリスに向かって距離を詰めようと走り出す。  遠くの本棚の上で、ジン。ゆっくりと頭を持ち上げる姿が見える。 「ジン!大丈夫なの!?」  モーリスは叫んだ。  意識を取り戻したジンは、モーリスの声に応えなかったが、右手を上げて、振って見せた。  だが、その本棚に居たはずのもう一人の侵入者、半身の朱毛女の姿が無い。眼を見張るモーリスに、ジンがその右手で指差して示す。  眠りに落ちている人間のベッドに向かって、空中を飛行する半身の朱毛女だ。  ジンはその後ろ姿を指差しながら、呻くように言った。 「モーリス、夢珠を……」  ジンの声が届いたのか、赤帽子のレンが叫んだ。 「こいつら夢珠を狙ってるんだ!モーリス!走れ!あの女に盗られちまう!」
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