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夢珠の形成は、今まさに集束した光の中心にてタマゴのように固まりつつある。その大きさは真珠のようではあるが、小人たちの世界では中玉と称されるに申し分ない。
完全に形成されると、浮力を失い落ちて来るのだが、朱色髪の女が空中を飛ぶ事が出来るならば、俄然有利なのはこちらではない。
モーリスは瞬間、戸惑う。
事前の打ち合わせならばレンがタマゴを取りに行くはずだ。
だが今一番足が速く、最も近い距離に居るのは自分なのだ。
誰しもが自分の役目だと言うだろう。灰髪のレオンも、そう見て動いた。
「そうはさせん!行けエンジュ!そのまま夢珠を戴くんだ!」
灰髪の声と共に、赤銅鎧が走る軌道を変えた。
モーリスに向かって走り出した脚は、真横に方向を向けて、人間のベッドに向かう。
モーリスが夢珠に向かうであろう先に立ち塞がるためだ。
モーリスは目の前の赤銅鎧が左に方向を変えるのを見て、足で床を蹴った。
人間のベッドにではなく、
「超・特・急!!」
レンの居る壁際に向かって。
「馬鹿な!?」
灰髪のレオンは目を疑う。
一瞬で消えたモーリスの姿と、その行動に理解を超えた戸惑いが口を突いて出る。レンに向かってモーリスの進路を開けてしまったとはいえ、その選択は『無い』はずだ。
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