第六夜 凶戦士 (後編)

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  「何考えてんだよ!」  レンの叫び。  目の前で黄色いスカートを舞わせて急停止したモーリスに湧いた不満をぶつける。  当人は困ったように眉根を寄せている。 「一か八か賭けてみたくなったのよ」  モーリスは、立ち上がったレンの背後に回る。痛い視線を躱すためでもあり、これから行う動作の為でもあった。 「何を賭けんだよ?」  尋ねるレン。  モーリスは少し早口に言った。 「今日まで私は他の仲間達にこの力を使う事を禁じてきたの。私の強すぎる力で誰かを傷つけるような事はしたくなかったし、それを利用されるのもまっぴらゴメン、だから絶対に使わなかった」 「モーリス?」 「レン、私はあなたを信じてる。ジンも心から信じる。だから私は……初めての仲間に、私はこの力を解放するわ」 「モーリス……」 「いくわよ、【疾風】!!」  チカラを込めた両手で、モーリスはレンの背中を叩いた。  レンの身体が一瞬、緑色に輝きを放つ。 「身体が、軽くなった!」  レンが驚きの声を上げた。 「慣れるまで気を付けて」 「モーリスと同じように動けるって事か!よーし!」  大剣の重さをゼロにして、夢珠に向けてレンは床を蹴った。  一足の跳躍は空気中の流れを産む。それは風と呼ばれる大自然の力だ。その軽やかに強大な大気の流れはレンの意思とは幾らか誤差を産み、目指したベッドの方角のみを正確に突き進む。  その先に灰髪の戦士が立ち塞がらなければ、反対側の壁に激突していたと推測される。が、しかし横から割り込んで来た灰髪のレオンは、身体ごとぶつかりながらもレンの進行を阻止した。 「ぐわっ」  勢いは殺せずに方向転換を余儀なくされたレンが弾かれ、お互いに吹き飛ぶ。
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