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「君は気づいていたのか?」
「ええ。私あの子の母親だもの」
善也と二人で帰った卒業式の日から6年の歳月が流れていた。
私に隠れて何かしているのかと思っていたけど、どうやら二人は本当に今の今まで友人として過ごしてきたらしい。
頭が良いと思っていたけどやはり私と一緒で馬鹿なようね。
「何で教えてくれなかったんだ!」
「教えてどうすればよかったの?善也を説得すればよかったの?」
「…………」
私は気づいていたけれど、気づいていない彼には先ほどまでいた善也の行動は理解できたものじゃないのだろう。
『大学を卒業したら珠緒と一緒に住むことにした。どこかに就職する予定もない。俺は珠緒と二人で生きていく』
そういって先ほど珠緒くんと二人で挨拶に来た善也は私が知る限りの一番良い表情で私と彼にそう告げた。
隣で驚く彼に珠緒くんが『ごめんなさい』と謝っていた。
「ねえどうして謝るの?それが悪いことだと思っているの?だから謝るの?謝るくらいなら離れなさい」
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