第1章

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【SIDE T】 「せーんぱい!よかったですねー!俺うれしい」 「よぉ珠……随分出来上がってるみたいじゃん」 「何かあっちで凍ってる酒ぐいぐい飲んでたよ……」 「あー、あれ飲みやすいからね~」 先輩におめでとうを伝えたくて、先輩の近くに行く。 何か先輩は言ってるけど、よくわからない。 それよりもまたあのお酒が飲みたくて、キョロキョロ見渡すがどうやら先輩の近くにはないみたいだ。 「もうお前は飲むなって」 「んーケチー」 でも俺は酒が飲めなくても先輩の進路が決まったことが嬉しくて楽しくて、クスクス笑いながら先輩に寄り掛かる。 悩んでいた先輩を知っているから本当に嬉しいのだ。 「お前さー、こんなのプリンスに知られていいわけ?せっかく進路決まったから俺まだ死にたくねーよ」 「プリンス?よしやのことですかー?よしやねー今からここ来るから大丈夫でーす」 「は?お前連絡したの?正気かよ?」 「だって俺寂しくなっちゃったし……」 俺がそういうと先輩は呆気にとられた顔をしている。なんでかわからないけど。 すると何故だか入口が騒がしくなってきた。 力が入らなくて先輩に体を預けていた俺も、気になって頑張って顔を上げるとそこには待ち望んだ顔があった。 「よしやぁー」 「珠緒……お前っ!」 「おい、珠離れてくれ!俺の命が風前の灯だ!」 先輩が横からぐいぐい俺を離そうとしているのが面白い。 それに反して俺は尚もくっつく。 先輩が困っているのを見るのはとても楽しい。 善也は怖い顔をしてこっちに歩いてくる。 俺を見ても怒ったままだから相当怒っているらしい。 普通なら俺に怖い顔は見せないのに……やっぱり急に呼んだのがまずかったのかな? 怒っている善也でも俺は早くそばに来てほしくて、ニコニコ笑いながら彼を待つ。 でもあともう少しという所でその道に は邪魔が入った。
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