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「よ、善也くんっ!」
俺と善也を隔てるように立ちはだかったのは、先輩の仲間内でも可愛いと評判の女の子だった。
ふわふわくるくる、柔らかそうでとても可愛いと思う。
可愛いと思うのに何故だか好きになれそうにはない。
「……どいてくれ」
「あのっ!あのっ、ずっと前から好きです!付き合ってください!」
善也はモテる。
善也の告白現場に遭遇することなんて今までにもあった。
善也は一度溜息を吐くと『悪い無理』と答える。
そんな二人の周りは告白している先輩を含めて酔っ払いばっかり。
善也の返答が気に食わないのかブーイングや、先輩に向かってのエールが飛び交っている。
そんな応援に後押しされたのか、振られた先輩は隣を通り過ぎる善也の腕を掴むと強引に自分のほうへ力強く引いたのだった。
そこからの動きはスローモーションで。
俺のほうに気を取られていた善也は、女の先輩の力に引かれ先輩に倒れこむ。
そこを狙っていたかのように先輩が支え、素早く善也の唇を奪ったのだった。
「きゃー!」
「ひゅーひゅー!」
「大胆ー!もっとやれー」
善也はどうにかして振りほどこうとしているが体制が悪いのかどうにも先輩の拘束から抜けられないらしい。
それを見た周りも告白した先輩の力になろうと善也の体を拘束するのを手伝い始めたようだった。
俺の目の前で繰り広げられるその行為は俺の体を動かすのには十分で。
「珠?」
今まで寄りかかっていた俺の重みを感じなくなったものだから先輩が俺を気にして名前を呼ぶが、その時すでに俺は立ち上がっていた。
「やめてよ!」
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