第1章

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【SIDE Y】 こんな大勢の目の前で大胆にもキスを仕掛けてきた珠緒は、今俺の腕の中ですやすやと寝息を立てている。 可愛い奴だ。一丁前に嫉妬して独占欲を剥き出しにしたようだ。 周りは一連の俺たちの行動を見て言葉を無くしているようで、まだ静かなままだ。 俺が蹴り飛ばした男はまだ意識が戻らないらしいし、俺にキスを仕掛けた女は泣いている。 珠緒が慕って いる留年していた先輩とやらは、開いた口がふさがらないらしい。 さて、どうしたものか。 「あー……就職おめでとうございます。珠緒酔ってるんで連れて帰ります」 「お、おう……」 「その人にも目覚めたら謝っといてください。それじゃ」 この場所の中心人物である珠緒の先輩に声をかけ、珠緒の荷物を拾い上げ居酒屋を後にする。 手の中の温もりと重みが心地よい。 やはり俺に色や感情を与えられるのは珠緒しかいないと痛感する。 寝ている珠緒の顔に何度も触れるだけのキスを落とす。 それがくすぐったいのか、俺の腕の中で頻りに身を捩っている。 「珠緒俺はやっとわかったよ。早く目覚ませ」 俺から珠緒を奪うような奴はいなくなればいい。 珠緒から俺を奪うような奴もいなくなればいい。 俺と珠緒二人だけになるためにどうすればいいか。 よく考えたら簡単だ。 産まれる前と同じように一つになれば良いのだから。
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