ある彼の一日

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「プリンスは?」 「あー、その呼び方久々に聞きました。善也は家にいますよ。在宅ワークみたいなやつですね」 「……株か?」 「まあ、当たらずとも遠からずですね。小さなコラムの連載やってたり、翻訳やってみたりとか器用に働いていますよ」 あの当時の俺から見た二人はとても危うくて、この社会という存在が二人の壁になっていることは明らかだった。 生きていくためには金が必要だ。 でも恐らく、この二人は離れてしまってはダメになるのだと思う。 確信はないが、俺にはそう思える何かがあった。 「頭良かったもんな。流石プリンスだな」 「今じゃ王子って言うより、王様って感じですよ」 多分それは珠緒が自分のものになったからだと俺は思ったが、それは言わないことにした。 言わなくてもきっと珠緒は分かっている。 守るべきものを手に入れたのだから責任も生まれる。 王子のように庇護される立場ではなく、庇護する立場の王へ進化したのだろう。 「あ、時間大丈夫ですか?まだ先輩お仕事中でしょう?」 「うん、まあ……。契約取れないんだよな。また怒られちゃうよ……」 「でも先輩頑張ってるじゃないですか。俺応援してますよ」 「おうよ!地道に頑張るぜ!」
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