後日①

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日が昇ったら起床して寝たくなったら眠る。 毎日毎日ラッシュ中の狭い電車に乗って勤務先を目指したり、時間や曜日を気にして仕事をする人たちは何てすごいのだろうと真剣に思う。 そういう柵から外れて生きて3年が経ったけど、輪の中に入っていなくても意外と生きれるものだったりする。 善也に求められた次の日の朝は、やはり日が昇りきった頃でないと起きれない。 当の本人はどこ吹く風でパソコンの前に座っていたりする。 今日だってそうだった。 周りの生活音と、日差しによってようやく覚醒した俺は自分がまだ裸のままだったことに気付く。 どうやらあの後処理はしてくれたようで、肌はサラサラだが服は着せてくれなかったらしい。 まあ服を着なくても年中快適な温度に設定している我が家は、多分裸で過ごしていても風邪を引くことはない。 好きな人と好きに生きる事を選択した俺たちだったけれど、何とか今日も生きている。明日は分からない。 卒業後、収入が安定しなかった頃は外に出かけても金を使うだけだと二人で引き籠り生活をしていた。 バイトに出て当面の生活費を稼ごうとしたが、やはりそれは善也が許さなかった。 俺を外に出すよりはマシだと、自分の親と俺の親に頭を下げ借金までした。 そこまでして二人で生活する必要があるのかとその時の俺は思ったけれども、何かを積極的に行っている善也を久々に見たのでそのまま何も言わずに従った。 俺たちの親が内心どう思っているか分からないが、金を貸すことに了承してくれてどうにか生きながらえた俺たちだった。 借りた金を細々と使ったとしていずれ尽きる。 これを資金にして何かを始めなければいけないと善也は言った。 その言葉通り善也はまずFXを始めた。 最初の内はうまくいかない事も多かったが、慣れてくると流石善也と言った感じで大金は得ないがちょくちょくと資産を増やしていった。 三ヶ月後には親たちに借金を返し、半年もたつと普通に一ヶ月働いた会社員と同程度の金額を利確していた。 確かに波はあるようでまったくプラスにならない日や、マイナスに終わった日もあるが慣らすと人が一人生活していくには十分な金額を善也は生み出していた。 その片手間応募してみた雑誌のコラムが、編集の人の目に留まり善也は無事在宅ワーカーとして確立していったのだった。
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