後日①

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反対に俺はと言えば、善也の生活の補助をしているだけだった。 女の人ならそれで満足なのかもしれないが、俺だって一人の男だ。 養ってもらってばかりではいけないと、善也の許可を得て図書館に通い始めた。 俺は善也のように頭がいいわけでも、勘が鋭いわけでもないので同じことはできない。 俺にしかできない何かで善也を支えたいと思うようになった。 でもたくさんの本を読んで少し知識を増やしても俺が出来そうなことは既に善也が行っていて、八方塞になってしまった。 何か資格を取ろうと考えたがパンフレットを取り寄せただけで終わってしまった。 そんな時だった。 あまり外出のしない俺たちは専ら買い物もネットで行っていて、その日も新しい服をネットで見ていた時だった。 なぜ今まで気づかなかったのだろう。 クリックして商品をかごに居れた時に、これなら自分でもできるのではないかと思ったのだった。 つまりネットを使用しての物の販売。 俺自身がクリエーターならば作品を作って世に発信することが出来るが、生憎俺は何かを生み出せる素質は無い。 生み出せないならば代行販売をすればいい。 今まさに俺自身が買ったこの服だって、この業者が作っているわけではないのだから。 そういった発想からまずは服を仕入れてみようと思ったが、俺にファッションの良し悪しが分かるわけでもなく、また仕入のルートもわからないので辞めることにした。 「俺、ネットのお店やろうと思うんだけど……」 ある晩、善也と肌を合わせた後自分で決めたことを告げてみた。 「ふーん……」 善也は何を考えているのかそう答えるだけだった。 多分俺が外に出るのを渋ってはいるが、俺が自分で何か決めたことを後押ししてやりたい気持ちもある……と言った面倒くさい状態なのだろう。 少し無言で考えていたかと思うと、徐にベッドを出てパソコンの前に移動した。 裸でパソコンの前に座る善也を毛布に包まりながら観察する。 薄明かりの中デスクトップの光に照らされている善也は本当に格好いいと思う。 在宅の仕事なんてせずにタレントやモデルに転職したとしてもきっと成功するであろう。 まあ薦めたとて俺との時間が減るという理由で首を縦に振ることはないと思うけど。 この目の前の人間が俺のものだと思うととても誇らしい。 それと同様に善也にも同じ気持ちを味わってほしいと思うのだ。
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