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結局あの後いろいろありながらも、編集さんのお姉さんとやり取りをしつつまずは美容室、カフェ、ラブホテルを相手にベッドや机、椅子を主な商品とした。
そこから口コミで顧客が増え、個人の要望にもなるべく応えるようにして顧客を獲得していくようになった。
月に1件くらいしか受注のない時もあれば、新規にオープンする店から契約をもらうと忙しくなったりもする。
初めて自分が働いた結果が形になった時には善也を少し高めのディナーに招待して奢ったりもした。
善也は喜んでくれて、この笑顔が見れるなら俺も頑張ろうと思うほどだった。
多分善也もそれは同じなのだろう。
だから目標があった方が自分の為になると言ったのだと思う。
一度だけ編集さんのお姉さんに御礼を言いに行くのと、自分であちらの空気を感じたくて善也とイギリスに行ってみた。
その旅費はほとんど善也持ちだったけれども、奴は珍しくはしゃいでいたりした。
どうやらハネムーンも兼ねていたようで、20日ほどあちらに滞在していたが半分はゴロゴロと生活していた。
ベッドから出ない日もあったが善也と二人でいることにとても幸せと感じる事が出来た。。
イギリスも素晴らしかったけれど、やはり日本に帰ってくると日本の素晴らしさを感じられずにはいられない。
善也は苦ではないかもしれないが、俺にとっては日常会話がままならないのが一番のストレスになった。
そんな感じで順調とは言えないかもしれないけれど、不調でもない俺の仕事は俺の気の向くまま客の気の向くまま行っている。
だから今日のように多少善也に無茶をされて起きるのが遅くなったとしても、全然大丈夫だったりする。
「善也ー?」
ベッドの中から奴を呼ぶが返事はない。
我が家は俺の声が届かない場所があるような広い家でもないので、どうせ買いものにでも出ているのだろう。
善也はもう少し広い家に引っ越したいらしいが、俺はあまり乗り気ではない。
リモコンも携帯も鍵も財布もそして善也も。
俺が手を伸ばしたらすべてに手が届くような……そういう広さが良いのだ。
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