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予定日近くになって少し体調が悪くなってしまった私は、少し早めに入院をすることにした。
そこで出会ったのが彼女である。
同室の彼女は私と同い年で、同じようにはじめての妊娠・出産で緊張しているとの事だった。
年齢も一緒で置かれた境遇も一緒で私たちはすぐに仲良くなった。
彼女は私とは逆に予定日を過ぎているようで、更にそれが不安を煽っているようであった。
毎日毎日大きなお腹に『早く出てきてねー』と語りかけていた。
数日後彼女が産気付き、病室を出て処置室へと移動になった。
そんな彼女を病室で見送っていた私は安堵し、これから出産に立ち向かう彼女にエールを送ったのだった。
ところが彼女の産気に宛てられたのか、予定日はまだ来週だと言うのに急に私の体も産気付け始め、彼女を追うように私も処置室に運ばれたのだった。
処置室でまた会った彼女は、私の顔を見るとびっくりしたようで『一緒にがんばろう』と励まし合ったのだった。
今思えば彼女の子は私の子を待っていたのかもしれない。
そして私の子は彼女の子を待っていたのかもしれない。
互いの夫も駆けつけ、私は彼の手を握り初めての出産に臨んだのだった。
初めてだと言うのに思いのほかスムーズに生まれた私の子供は、それはそれは元気な男の子だった。
彼と一緒に善也と名付けたその子と共に次の日病室に戻ると、彼女も自分の子供と一緒にそこに居た。
二人とも同じ日に出産したらしい私たちは互いの子を見せ合った。
彼女の子は珠緒と名付けられていた。
「女の子みたいな名前ね」
「この子ったらずっと股の間で隠してたのよ!てっきり女の子だと思って考えていた名前全部女の子だったのよ。でも珠緒ならギリギリ男でも大丈夫でしょう!」
「ほら、善也。珠緒くんですよー」
「珠緒~、おんなじ日に生まれた善也くんですよー」
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