183人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
私の言葉にハッとした珠緒くんはもう一度頭を下げて『善也を産んで、育ててくれてありがとうございます』と言い直した。
彼は隣でまだ何か善也に聞いていたが、善也の顔を見て悟ったのだろう。
自分の子供が一つの決断をしたことに。
『また来る』
そう行って先ほど善也と珠緒くんはこの家を後にした。
「だってこれから二人には様々な障害が行く手を阻むのよ。私たちがその障害になっていたら彼ら参ってしまうじゃない」
「それはそうだが……」
「それにこの世には男と女しかいないのよ。男を好きになるのも女を好きになるのも同じ確率なんだから、別にいいじゃない」
「……本当に君はたまにとても素晴らしいことを言うね。君と出会って20年以上経つけれど毎日君に恋をしているよ」
「ありがとう私もよ」
彼と出会って彼の子供を授かって私はとても幸せ。
この幸せを私たちの幸せの形である善也にも知ってもらいたい。
「あなたの遺伝子が残らないのは残念だけど、変にあなたに似たら私その子に付きっきりになっちゃうから良いのかもね」
「それは言えているね。その分僕は君と善也に愛を注ぐよ」
「うん。だから彼らが困っていたら必ず助けてあげましょう」
人を愛するってとても大変よ、善也。
でもその気持ちを知らないまま死を迎える人もいる。
だからその気持ちを知ることが出来た善也は幸せなはずよ。
例えそれが周りと違う幸せの形だとしても、私はその幸せの形嫌いじゃないわ。
最初のコメントを投稿しよう!