185人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
家の中で二人でいる事が多い俺たちは、普段極力外を出歩かない。
それに不満を持ったことはないが、たまになら良いのではないかと思う。
テレビで特集をしていた大きなテラスが開放的なこの店で今日の昼食を取ることに決めたが、今だって善也は周りの視線をことごとく集めている。
それは道を歩く人だったり、店内の他の客だったり、オーダーを取りに来た店員だったり。
善也はそれらの視線を気に留めることなく普通に受け流している。
付き合う前に見てきた光景が、今再び目の前に繰り広げられていて少々面白い。
面白さを齎す二人だけじゃない世界も良いところはある。だが俺たちには生き辛い。
少しずつ世間が同性愛に寛容になっているとしても、まだこの国では少数派だ。
視線も普通とは違ったものを向けられる時もある。
それでもこの目の前の男が好きなのだからしょうがない。
「どうした?」
「別にー」
善也が頼んだのはランチのエッグベネディクトのプレート。
それを咀嚼しながら時折何か考えているようなので、恐らくレシピでも予想しているのだろう。
この店と似たエッグベネディクトが近々我が家でも食べられるようになりそうだ。
俺はと言えばランチの魚のソテーを食べていて、味よりもプレートの方に気になっていたりする。
このようなワンプレートの食器は日本のカフェでも人気である。
ここの店はウッド調のワンプレートだが、陶器でも人気は出るように思える。
あちらの鮮やかな色合いが描かれたプレート。
陶器なので小さい子供がいる家庭には不向きかもしれないが、同棲中のカップルや子供のいない夫婦には人気が出そうだ。
「珠緒」
「ん?」
「とりあえずまず食べろ」
「そうだね」
海外雑貨の輸入代行業を始めてから、どこか外に出かけてもついつい仕事の事と結び付けてしまう癖がついてしまった。
善也に指摘されなければ恐らくずっと考えていたに違いない。
食べるのが余り早くない俺は善也と食事をすると自分の食べている姿をずっと見られると言う羞恥プレイを強いられる。
それが嫌で早く食べようと思うのだが、俺の早くは他人の普通位の早さらしい。
最初のコメントを投稿しよう!