「時の滴」

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パタンと蓋を閉じた。 小さな箱の中に 全てを押し込んだんだ。 もう開ける事は無い、と 鍵を掛けた。 冷たい鍵が 全てを閉ざす。 流した涙も 疼く傷も 全部 奥底に隠してしまえ。 そうすれば笑える。 笑えると信じていた。 なのに 何故だろう。 今も掌にある鍵を 私は放せずにいる。 強く 強く握り締めて 手放せずに。 未練からか。 この想いが 消えてしまうのが 恐いからか。 それとも 今尚 望んでいるからだろうか。 最後の光を。 時の滴が 輝くように。
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